2015年度  第1回例会【公開講演会】  2015620

支部長開会の挨拶

大学女性協会京都支部第1回例会に、会員の皆様そしてたくさんの一般の皆様がご参加くださいまして、本当にありがとうございます。
本日は、今年度初例会の公開講演会のテーマとして、大切な「憲法」を取り上げました。今当に、私達日本国民の一番の関心は、毎日、テレビや新聞などで報じられている「安保法制案」です。未来を生きる子供たちのために今、私達大人は、また女性として何をしておかなくてはいけないのかを真剣に考えなくてはいけない時と思います。
お忙しい中、講師を快くお引き受けくださいました弁護士の佐賀千恵美先生のお話をお聞きして、戦後70年の憲法の歴史とその背景を基本から見つめ直し、今なぜ安保法制の整備なのかをじっくりと考えてみたいと思います。
子供達に生きるための良い環境を残してあげるために、私達は主権者としてしっかりと考え、正しい意思決定をして行かなくてはいけません。
今日の講演会は、そのためのきっと良い機会となってくれることを願っています。

 

講演【憲法をめぐる議論】

講師 弁護士 佐賀千恵美氏
【講師の紹介】
熊本県出身。昭和53年3月東大法学部卒業後、東京検察庁検事を経て昭和61年より京都で弁護士活動。京都弁護士会副会長や講演、著作活動など多方面で活躍中。又、JAUW京都支部会員で1978年の国際会議では若手メンバーとして活躍もあり、支部の頼母しい存在である. 趣味は俳句。朝日俳壇で選者加藤楸邨より1位、5位に選句される。著書に「華やぐ女たち・女性法曹のあけぼの」など。

【講演】
初めに、今日は憲法をめぐる論議ですが、このテーマは立場によって見解が非常に違う改憲派と護憲派では同じ9条でも全然違うことをいう。私はできるだけ基本に立ち戻って客観的に状態を整理してお話し、みなさんの意見を伺いたい。今国会ではシビアな議論の最中でもあるので、このテーマの会は非常にタイムリーです。
【講演内容の概略】
T.日本国憲法
1(1)大日本帝国憲法(明治23年、1890年施行)
第1条  大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
(2)日本国憲法(昭和22年、1947年施行)の現憲法

2.日本国憲法の三原則
(1)基本的人権の尊重 個々の人間に至上の価値を認め、これを尊重する。
(2)国民主権     政治権力の根拠もまた個人にある。
(3)平和主義     平和なくして個人の自由と生存はない。
(1)の人権には経済的権利、身体拘束されない権利(むやみに逮捕したり死刑にしたりできない)、思想・信条の自由、参政権、生存権などがある。私たち女性として大事なのは、戦前は女性には選挙権がなかったが、この憲法で両性に平等に選挙権が保障された。又教育権も男女平等に教育を受けられる事を保障されている。先年のマララさんの例でみるように、今でも女性の教育が保障されていない国がある。ただし、権利が保障されているといっても実質的には平等でないことも多いが、法的には平等である。又(3)の平和主義は他国の憲法とは際だったものである。

3.改正が議論になっているのは主に第9条。他に環境権、一院制もあるが争点は9条。
第9条(戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認)
@日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
A前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
理想的であるが、この憲法が出来たのが敗戦の後であることが問題で、改憲が言われている。

4.改正(第96条)
(1)各議院の総議員の3分の2以上で発議
国民投票の過半数の賛成 (投票数の2分の1以上)
(2)現在、衆議院は現政権が3分の2の賛成は得られるが、参議院は3分の2に達しない。来年夏の参議院の選挙(半数改選)は重要。
改正は国民が決めることであると96条に書かれているが、日本の憲法改正は他国に比べ、非常にハードルが高い。
5.安部政権は今回の安保法制は集団的自衛権により、憲法改正までは不要との見解。
安保法制への国民の賛否は半々。

U.個別的自衛権、集団的自衛権
1.国際連合憲章(第51条)は集団的自衛権を認めている。
(第51条)この憲章の如何なる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が、国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

  1. 日本国憲法(前文、第9条)

(前分第2段落)日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

 

 

従前政府

現政府

個別的自衛権がある

× △

戦力は持てるか

×

集団的自衛権はあるか

×

×

武力行使が出来るか

×

個別自衛

三要件

  1. 集団的自衛権とは

(1)一般に、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国への攻撃と同視して実力をもって反撃する権利(軍事同盟ブロック)
(2)安倍政権の武力行使の三要件(平成26年7月の閣議決定)
* 我が国への武力攻撃が発生し、または我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
* これを排除し我が国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がない
* 必要最小限度の実行行使にとどまるべき
この三要件は軍事ブロックの場合とは異なる。我が国の存立が脅かされるという要件では個別的自衛権と変わらないが、我が国への直接的な攻撃が発生していなくても武力行使があり得る点では異なる。

V.何故今、安保法制の整備か
戦後70年の現在まで世界情勢の変化を辿ってみると

  1. 米ソ冷戦の時代(1945年から1991年)

昭和20年(1945年)敗戦。日本の無力化,宮城と9条 
天皇を温存するには無力化と引き換え
25年(1950年)朝鮮戦争。警察予備隊7.5万人。反共。
アメリカは反共の砦として日本を位置づけ警察予備隊(自衛隊)を認める。
昭和27年(1952年)講和条約と日米安保条約
平成 3年(1991年)ソ連崩壊、冷戦終結

  1. アメリカ一極の時代(1992年〜2008年)

平成 4年(1992年)ビル・クリントンが大統領に就任
13年(2001年)9.11同時多発テロ
20年(2008年)リーマンショック、アメリカ一極の崩壊

3.米中二極の時代(2009年〜)
平成21年(2009年)バラック・オバマが大統領に就任、アメリカの軍事力の
後退
22年(2010年)尖閣諸島、中国漁船衝突問題。
尖閣諸島自体は小さいが、その領有をめぐっての争いはその島の周囲12海里はその島を領有する国の領海とするとされていることにより、これが経済的、軍事的にも大きい問題を含むからである。
26年(2014年)ISIL(イスラム国)、ウクライナ問題。 
オバマ大統領の内向政策から発生した問題とも言われる。
27年(2015年)中国の南シナ海進出。アジアインフラ投資銀行(AIIE)。
南沙諸島はフィリピンとブルネイのあいだにある諸島。島々はフィリピンやマレーシア、ベトナムが領有している。
中国は島までいかない岩礁を既に中国の支配下にあるとして埋立ており、九段線を南シナ海における中国の境界線と主張し、この南沙諸島が存在する南シナ海を舌状に大きく支配下に置こうとしている。

2015年6月1日京都新聞朝刊の記事より
【シンガポール共同通信】は[中国人民解放軍の孫建国副総参謀長はシンガポールのアジア安全保障会議の講演で、南シナ海での岩礁埋め立ては「軍事、防衛上の必要なニーズを満たすため」と述べ、軍事目的が含まれていると明言した。中国軍幹部が公の場で埋め立ての軍事目的に言及したのは初めてとみられる。孫氏は同海域のファィアリクロス礁での埋め立ての主目的は海難救助や防災だとし「中国の主権の範囲内で完全に道理に叶い合法だ」と主張、米国が介入しないよう牽制した。又埋め立ては航行の自由には影響しないとも強調。日米や東南アジア各国に広がる「中国脅威論」の払拭(ふっしょく)に努めた。・・・ ]
アジアインフラ銀行は中国が大半の出資。日米は不参加。

W.国際紛争への抑止力

  1. 核保有国

・アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国(5大国)
・インド、パキスタン、北朝鮮(核保有を表明) 
北朝鮮は、日本、韓国はアメリカの核傘下にあるのだから、北朝鮮が核を保有するのは当然のことであると主張している。
・イスラエル(公式宣言はなし)
2.宇宙と軍事
3.サイバーテロ
4.ドローンや兵器ロボット
X.中国問題 
1.日本の戦後はアメリカの核の傘下での平和と経済
2.中国
(1)チベツト、ウイグルの問題
(2)台湾の問題
(3)南シナ海、尖閣諸島(海の自由航行が出来るか、軍事拠点か)
(4)アフリカ、シベリアへ中国人の進出 
3.中国、北朝鮮という近隣国、中東のホルムズ海峡 
集団的自衛権、安保法制の拡大
日本の防衛力の強化
Y.主権者としてどんな意思決定をするか
1.日本国憲法の理想と現実をどう考えるか
人間や国家間の争いの存在。特に中国、韓国との問題。
それへの対処方法。   
2.改憲は必要か。

【参加者発言の要約】
参加者全員が一人ひとり自分の意見を述べるなど、活発に意見交換されました。

    1. 基本的な事からしっかりと学び、考えることが出来、更にしっかりとした意見が持てるようにならなければいけないと思っている
    2. 問題は憲法制定時の状況にある。アメリカの力の衰退とオバマの内向政策がはっきりした段階で、日本が憲法をいちども改正していないのは問題であると思う
    3. 参考人として政府が呼んだ憲法学者の意見が、違憲といっているのに耳を貸さない政府の態度に不信を持つ
    4. 限られた情報しか我々に届かないことは過去の例からもわかる。そのことも考えて判断する必要がある
    5. 沖縄の犠牲の上に、今日の日本があることを、もっと重く受け止めねば
    6. アメリカの軍事力が後退した段階だから、集団的自衛権で日本に助けてほしいというアメリカの意向を、政府は一方的に引き受けようとしているのでは
    7. 講師の偏らない説明を受け、今から勉強をと思っている
    8. 派遣がいつの間にか派兵になっているような永田町発言は、注意して受け止めねば
    9. 戦闘地域で武力行使している他国軍に自衛隊が物資の輸送や補給を後方支援するのはいかがなものか。後方に弾丸が来ないということはない。これは武力行使と一体化でまさに違憲性が問われる。
    10. 国会での発言は戦争に行っていない人の意見だ
    11. 国連がもっと役に立ってもらえないのか。日本の憲法の理想は素晴らしい。この文言を残す事は大事である
    12. 先の戦争では皆が政府の方針に意見をだすこともお互いが話し合うこともできずに来てしまった。今度はそん事にならないよう、みんながもっと話し合って戦争を阻止しなければいけない
    13. 戦争では非人間的なことが起こるので、反対である。しかし一方的なやり方では平和は守れない
    14. 70年平和を続けられた憲法は守るべきだ
    15. 憲法を少しずつ変えていくのは、戦争をやりやすくしているように思う
    16. 安保があって平和が守られていると思う
    17. 今、日本は分岐点にある。政府の意向に反対する勢力が弱すぎ、危うさを感じる
    18. いろいろ心配するが、自分に何ができるか。又できるとも思えないが、今ここに出席している事に意義がある
    19. 昭和史を読むと戦前の社会情勢の流れが、今の状況に似ていて不安を感じる
    20. 学徒動員や早期卒業で勉強が出来なかった私たちの虚しさを次世代に味わせないよう、戦争には反対
    21. 徴兵制ということを耳にしたが、子や孫のためにそのようなことが起こらないよう願っている
    22. 日本独自では平和、安全を守れないと思う。戦争になってはいけないから、集団的自衛権が必要なのでは

  ・ 幼い頃、大阪の大空襲で罹災し家は全焼した。こんな怖い経験は二度としたくない。どのような戦争も反対、今回の法案提出は強引だ。

講師から「各自が考えることが大事で、皆さん方はよく考えてられると思いました。それが国民主権で、頼もしいと感じています」とのことでした。
高橋副支部長より講師への感謝と、「私たちの戦争体験が憲法改正とどのように結びついていくかは、各々の立場から考えていかねばならないが、それには日本は情報が正確に伝えられていないし、また制限されていることに注意しなければならないと今日改めて感じた」という言葉で締め括られた。

    1. 佐賀弁護士の朝日俳壇で入選された俳句は次の3句です。

街こほろぎ工事ランプの側に鳴く。
芒野に立ちて時間の失せにける
降る雪に見知らぬ街となりにけり

 

    1. 久代会員の俳句 

芋蔓の灰汁に染む手や土間の虫

この俳句は、久代会員が在学中された京都府立第一高女の俳句クラブで友人が読まれた句だそうですが、その場にいたみんなが思わず同感した忘れられない一句だとのこと。戦後生活のペーソスが漂って、似たような体験を私達も持っていることを思い出させたことでした。久代会員が二度と戦争がないようにとの思いをこの句に託して、紹介されたのでしょう。平和へのねがいを強く共感した今日の例会。敢えて、この句を此処に記させていただきました。