2015年度大学女性協会京都支部第.2回例会報告

 

【講演】女性研究者の立場から見た男女共同参画::支援と課題

【講師】稲 葉 カ ヨ

   京都大学理事・副学長、生命科学研究科教授、

 男女共同参画推進センター長 JAUW会員

【日時】平成27912() ⒔:301600

【会場】ウイングス京都

 

 

 

 

 

 

 

        

 

9月例会は公私ともご多忙の稲葉先生を運よくお迎え出来、上記テーマのご講演をいただきました。

現在、国の成長戦略として「女性の活躍」が注目を集めています。女性が活き活きと人生を充実できる社会を目指すためには何をどうすべきかを先生の講演より勉強し、考える機会になりました。先生はご自身の貴重な体験を交えながら穏やかに時にはユーモアを添え、長時間お話しくださいました。小柄なお体が大きな存在の方に見えました。以下はご講演のあらましです。

 

1.世界における日本女性の現状・先進国に仲間入りしている日本が何故こんなに低

いのか?

2014年のGlobal Gender Gap Report によると日本の指数は世界142ヶ国中104位(企業・政治分野への進出は129 ,教育は93位。健康分野37位)。

 

女性の就業率

男女の所得格差(正規雇用者)

女性の管理職数

62.5 %  

26.6%        

日本・韓国

11.3%

OECD

57.5 %

OECD

17.3%        

フランス

39.4

アイスランド

79.9%

35.0%

アメリカ

43.7

OECD=経済協力開発機構は先進諸国で構成され現在34か国が加盟、我が国は1964年に加盟。

 

U 女性の就労環境の現状

女性の就業率は62.5%、共働き世帯は1077万世帯と増加している。(平成26年)以前より女性の職場が開放され労働環境も改善されているのにどうして女性の就労環境がよくならないのか?女性の置かれている現状は?

 

@結婚や育児期の女性(30才前後)の離職による労働力率のM字カーブの落ち込みは最近少し減少している。離職後の再就職では正規就労に困難を伴い、3050台女性の70%が働いているが大半が非正規規就労である。

A男女間や正規、非正規の賃金格差が大きい。

B「夫は外、妻は家を守るという」考え方に対し、賛成 女11.2%、男14.5% どちらかといえば賛成は男女ともに32%で、男女ともこの10年間、大きな変化はなく、横ばい状況。

C夫に一定の収入があれば働かなくてもよい。働きたくない考え方の人も多い(働いても先が見えない、体力がない、大変・・・等々)。

D非正規就労者にとって年収130万円の壁問題。

E自分に適した仕事がない。

F厳しい仕事をし続ける覚悟が女性にはないのではないか。

 

V、日本社会のこれからの方向・流れ

➀国際競争力(経済)        日本は 1993年の1位→2013年には24位、

韓国は 2013 年には20位に上昇

科学技術革新力           日本は 2007年の6位→2013年は25

と急速に他国に追い抜かれている

A労働人口  少子高齢化、人口減、若年労働者の減少の中、女性の就業率が変化しないと労働人口に問題あり。

B女性研究者数の割合  OECDの中で最下位 14.6%。ポルトガル 最高で45.0

         欧米は30%台が多い。韓国18.2

C博士号取得者数    2005140~150名 2010年も同じくらい。他国に比べ少ない。企業は即戦力を求めるので修士の採用(4,3%)はあるが、博士は歓迎されないこともあり、男性は大学卒業または大学院修士修了が多い。

一方、女性は修士修了者の殆どが博士コースへ進学。

◎男女が同様に働く状態になれば、日本のGDP20%の上昇が期待されるとの見通しもあり、女性の活躍を期待するアクティブプランがいろいろ打ち出されている。

 

W 女性研究者にとっての問題点は?

京大理学部・大学院所属の男女研究者の実態調査 ( 2011 女性研究者育成事業案作成のため)

・配偶者に関するもの 

男性 殆どが配偶者あり、半数が専業主婦、同居 

女性 独身もあり、配偶者は同業が殆ど。研究の持続のため別居も多く、50才以上では半数が別居 

・育児に関するもの

男性 育児、育休とも無関係、研究時間、海外出張ともに制約なし

女性 殆どが育児担当で研究時間、海外出張に制約、育休利用は90%,

育児をとしての市民活動の場がある

・指導的役割の女性が少ない理由

男性 女性は指導者としての適性が少ない、イメージが良くない

女性 仕事と家庭の両立が困難、仕事の中断が困難、上司として女性が望まれない

・ポストドクターに関するもの

年齢構成  男性は若手が減少、3034才が最大で全体の7割

女性は若手が減少、3034才が上昇。男女ともポスドクの年齢が上昇

・正規職への移行率

男性7%、女性4.4%50歳以上では女性は殆どない。

正規ポスト確保の難しさが見える。

 

X 男女共同参画推進の為のプラン

        

 

国立大に於ける男女共同参画推進アクションプラン(2012年作成)

@ 女性教員比率の引き上げ目標を設定

2010 12.7% → 201517%以上に(各大学で1年に1%の引き上げ)

A 引き上げの為の具体策

環境整備、意識改革、採用時のポジティブアクション(女性だけのポジションの確定、積極的に女性を採用、女性一人採用に付きその部署は研究員4名の配置可)

中高生及び保護者に向けた懇談会で若手のためのローモデルを示す、非常勤講師の待遇改善

第三次男女共同参画基本計画

2015年年度末までに実施する具体的施策 女性の就業率のM字カーブの解消、指導的ポジションの女性を30%に、科学技術分野における女性の復帰支援、総合的支援としての環境づくり(学内保育所の設置、病児保育、時間勤務制、研究支援者の配置)

数値目標達成のための具体的取り組みの状況、経過の公表を義務付けている

第四次基本計画

基本的に第三次計画を継続。新たに採用時の積極的措置、再チャレンジ支援、中高生の理系進路選択支援(科学塾の設置)を検討

第四次科学技術基本計画

基礎研究及び科学技術を扱う人材の育成強化、独創的で優れた研究者の養成、女性研究者の活躍の促進 など

 

Y.仕事を継続するために

@現状を変える

@ ワークライフバランスの実現・・勤務体制、環境改善、育児介護支援の充実

A ライフイベント期間中の業績評価方法の検討

B 意思決定課程への女性の参画拡大

A    意識を変える

@ 男女ともに家庭内役割意識の撤廃

A 意識改革に向けた効果的戦略的な普及・啓発の実施

B 教育の結果の社会還元意識の徹底、プロフェショナル教育の徹底

C キャリア教育の充実

 

Gender equalityとは共同でなく協同である。                

多用な力の結集により豊かな発想と新たな展開のもとに持続的発展を目指すことだと思う。

Gender equality の実現に向けて

育つ覚悟; 自分の能力を最大限に発揮する努力

活かす覚悟; 所属人材の能力を最大限に引き出す

育てる覚悟; プロジェクト・機関・人への不退転の投資

が求められているのではないか?

 

1999年男女共同参画基本法の制定以前よりJAUWはこの問題に取り組み、今年10月の全国セミナーでは昨年に引き続き[女性の自立]がテーマである。本年度末には第四次男女共同参画基本企画が閣議決定とのことであるが、目標への道はまだまだ遠い。今日は神戸・奈良、PP関西支部など多くの方の参加を得、稲葉先生から数多くのデーターをもとに男女共同参加画の状況を改めて認識でき、今後のとりくみについての示唆もいただいた。久保支部長の挨拶にもあったように私達の子や孫の世代が活き活きと活躍できる社会の実現を願って、良い勉強の機会となった例会でした。参加者37名(京都支部⒛名のほか神戸、奈良支部、一般ビジター17名)

 

最後になりましたが、当会員である稲葉先生が、世界で最も優れた女性科学者に与えられる

ロレアルユネスコ女性科学賞を受賞されました。おめでとうございます。