季節の便り アーカイブス
第6回
JAUW国際奨学生制度によせて
大学女性協会は、1970年から1~2名の女性研究者を国外から招聘している。これまでに90名近い女性研究者がこの奨学金制度により来日し大学・研究機関などで3か月~6か月研鑽に励んできた。
私は2016年度から2019年度まで、国際奨学委員長として奨学生の募集・選考に当たってきた。その4年間では7名の奨学生が数か月間の研鑽に励んだ。来日直後の奨学生を滞在先の研究室に訪問あるいはJAUW事務所に招いて面談し、研究への姿勢などを確認するのは委員会委員としてなによりもの楽しみであった。研究室を訪問する際には、当該研究機関所在地のJAUW支部会員のご同道をお願いした。支部の方たちが奨学生・指導教員との面談、研究室見学などをお楽しみくださり、さらに、奨学生の滞在中、何かとご配慮くださったことに心から感謝している。理系研究室訪問では実験室や測定機器などを指導教員と奨学生の案内で見学させていただいたが、最先端の実験装置を使っての実験開始に胸躍らせている奨学生の様子が印象的であった。
私自身のそのような海外での研究経験はというと、日本で博士(理学)の学位を1968年3月に取得した数日後には渡米してウイスコンシン大学化学科の博士研究員(PD)となった。それは私にとってのカルチャーショックと試練の1年半だった。科学後進国であった当時の日本の大学の化学実験設備と米国のそれとは全くレベルが違い、実験を始めるに際して途方に暮れることばかりであった。例えば、東大キャンパスには専従オペレーター付きで1台あるだけの大型測定機器を、アメリカでは不安と恐怖心で一杯になりながら一人で操作しなければならなかった。日本の研究室に来た奨学生たちは私のような経験をするのだろうかとふと思ったりしたが、私の留学した半世紀以上前に比べると、世界は目覚ましく進化して、そのような格差は少なくなっているだろう。
2020年度の奨学生募集は2019年11月に開始し2020年3月31日に締め切った。例年より多い63名の応募者があった。しかし世界中でのコロナ感染拡大の事態を勘案し「2020年度国際奨学生選考の取りやめ」を急遽決定、応募者と引受先の教員にはただちにその旨をメール連絡した。2021年度、2022年度の奨学生募集も同様の理由で中止した。そういう状況の中、今年の会報273号に「国際奨学生よりのメッセージ」として4名の奨学生の近況報告を掲載させていただいた。彼女たちが帰国後も日本での研究・研鑽の成果をもとに輝きながら前進し続けていることを嬉しく思った。国際奨学生制度の意義を再確認することもできた。コロナ状況が改善して来年度は奨学生募集を開始できることを心から願っている。
奨学担当理事 岩村道子